ALTEC A5 を小型化する
ALTEC A5 を持ち運べるサイズに小型化する
太平洋戦争終結の年に発売された ALTEC A5 スピーカー。その音の良さは今も色あせる事なく、心地良い音を街角に 届けるのには最高の PA スピーカーです。しかし気軽に持ち出せる大きさではなく、この大きさを何とかしないと使いものにはなりません。そこで代用できる部品を探し、それを使って小型化する事にしました。
そしてはじめに取組んだのは、巨大なALTEC の HF(高音)ホーンの代用品を探す事でした。
HF ホーンを試す
まず、日本向け ALTEC A5 の標準ホーンとして使われていた 311-90 の代わりに使えそうなものをいろいろ試してみました。最初に試したのは Fostex H251 で、これは何度も現場で使用しました。
その他に YAMAHA の FRP 製 CD ホーン、TOA の HRH-851 ラジアルホーン、ALTEC MRⅡ 594 と 564 Mantaray ホーンなどを試しました。しかしこれらはいずれもサイズ、または音質的に満足できるものではありませんでした。
ALTEC 811 似の 1.4 インチホーン
そして、 そうこうしているうちに、オーディオショップで ALTEC 811 のスロート径を 1.4 インチに変更したような形状の、無名のセクトラルホーンを見付けました。すぐにこれを入手して試してみたところ、音が良いうえ手頃な大きですので、これをメインに使う事にしました。
Fostex H251 + ALTEC 299
2 インチのスロート径を 1.4 インチに変換。カットオフ 250Hz 。力がありよく通る音。JBL 4560 互換ウーファーボックスと組合わせで使用。大きさは ALTEC 311-90 と大差なく小型化が不充分。
ALTEC CD ホーン & TOA ホーン
TOA の HRH-851 ラジアルホーンについては、音は良いが横幅が広すぎて小型のウーファーボックスに乗せるとはみ出してしまう。ALTEC の CD ホーンはプラスチック臭い音に違和感が残る。
ウーファーとの組合せ
HF ホーンについては他にもいろいろ試ましたが、ALTEC 311-90 の代用品としては、音も形も 811b に似た小型のセクトラルホーンがいちばん似合います。そこで、まずはこれを常用する事に決め、組み合わせるウーファーを用意しました。できればウーファーボックスにもホーン型を使いたいところですが、どうしても大きくなってしまいますので、とりあえずバスレフ型のものを使う事にしました。
また、手間のかかる自作は避けできるだけ既製品を入手し、その低音部だけ使うようにしました。しかしユニットを ALTEC 515-8GHP に交換したいので、TOA 製品以外には使えるものがほとんどありません。
ALTEC 811 風の小型代用ホーン + バスレフ型ウーファー
15インチ(38cm)用ボックスについては、TOA 380-SE を入手し、ウーファーを 515-8GHP に交換しウーファーだけを使用。そして片側 2台を縦や横に設置して使用。この頃のTOA の製品には ALTEC製品との互換性があるものが多い。 12インチ(30cm)用ボックスは自作し ALTEC ER12S を組込んた。 サブウーファーは EV Eliminator のキャビネットに JBL E140 を組込んで使用した。
ホーン型ウーファーと組合せる
その後オークションサイトで、12インチサイズのフロントロードボックスとバックロードボックスを見付けて入手しました。どちらも 15inchサイズの本物を比例縮小したような形状になっており、見た目のバランスも良好です。サイズに合わせて音もだいぶ縮んでしまっていますがなんとか使えるレベルに納まっています 。
という事で、すぐにこのフロントロードホーンのボックスを常用するようになりました。
なお、このスピーカーボックスは TOA の既製品ですが、バスレフ開口部にダクトと追加し共振点を 48Hz に下げて使っています。
マルチセルラー型ホーン
ALTEC A5 の日本向け以外の製品には、セクトラルホーンではなくマルチセルラーホーンが使われていたそうです。セクトラルホーンの代用品についてはここまでに紹介したとおりですが、マルチセルラーホーンについてもいくつか試しました。 マルチセルラー型は高域が出ませんので、常用には向きませんが、男性ボーカルには良く合います。
なおこの、これぞ ALTEC という風貌のマルチセルラーホーンは、もちろん本物ではなく、日本の Pioneer 製 です。
巨大な ALTEC がこんなに小さくなりました
ALTEC VOT の画像は、サウンド与太噺 より引用
ALTEC社 1945年のカタログ を併せてご覧ください。
ALTEC A5 と同じオールホーンの構成のまま縮小する事により、ビジュアル的にも 完成度が高まりました。この試みに於いては見た目が古くなることも進化の一つであり、ALTEC のレトロ感が再現できたことにより一区切りつける事ができました。このスピーカーをびわこジャズフェスティバル 2013 で投入し、その後のライブイベントではだいたいこの TOA LSC-711 エンクロージャーを使った A5 小型化品を使っています。