CP12Ⅱの解剖とチューニング

投稿日: カテゴリー: Live AUDIO

Classic Pro CP12Ⅱ の中古品を 3 台入手し、チューニングを試みました。その結果、ウーファーの交換と、HF の音圧 1-2db  下げただけで音質が劇的に改善され、お気に入りの逸品になりました。

チューニングに先立ち現物の音と構造を確認し、さらに製造元の web をあたって素性を調べました。音質については、sx200 同様にハイキーなバランスですが sx200 よりも 歪感が少なく、クリーンな音に聴こえます。また、製造元は Beta three ブランドのスピーカを販売している Elder Audio Manufacture.Co.,Ltd. という中国の会社であることがわかったので、このメーカーのホームページをあたってみたところ、以下の情報がありました。

Beta three ES212/85 の仕様

Construction Plywood
Transducers 1 x 3” HF Compression Driver + 1 x 12” LF
Crossover 2.5kHz
Frequency Response (-3dB) 60Hz-16kHz
Rated Power 250W (RMS)
Sensitivity (1W @ 1m) 97dB
Rated Impedance
Dispersion (H x V ) 80° x 50°
Connector NL4
Dimensions (W x D x H) 397mm (15.6”) x 370mm (14.6”) x 600mm (23.6”)
Packaging Dimensions (1 pieces/pack) 505mm (19.9”) x 480mm (18.9”) x 720mm (28.4”)
Net Weight (1 pieces/pack) 25kg (55lb)
Gross Weight (1 pieces/pack) 29kg (63.8lb)

これぞまさしく Classic Pro CP12Ⅱ です。尤も Classic Pro CP12Ⅱ はサウンドハウスのプライベートブランドで販売されている製品なので、カスタマイズされている可能性もありますが・・・

この仕様書によると、クロスオーバー周波数は 2.5kHz になっています。予想よりも高めなので 取扱説明書 を見てみると、こちらでは 2.2kHz になっていました。また Rated Power は Classic Pro CP12Ⅱ  の 500W に対してこちらでは 250W (RMS) になっています。おそらくこれは瞬間最大入力と RMS の違いだと思われます。

さらに、より詳しく知るために 取扱説明書 を見てみるとHF ドライバー(ツイータ)のダイアフラムの材質がチタンであるとされています。一方でこのスピーカーに使われているドラーバーと思われる 75ED36-8N-LM の仕様書 では Al Mg Alloy (アルミとマグネシウムの合金)となっています。これについてはカスタマイズされている可能性があります。いずれにせよこの製品に使われているドライバーはハイエンド製品にしか使われていない 1.5 インチ仕様のものであり、これがこのスピーカーの最大のアドバンテージであると言えます。

また製品のスペックはさておき現物を見ると、全く手抜きせず音質を追及した製品である事が実感できます。ダイキャストフレーム・18cm 径のマグネットのウーファー、1.5 インチスロートの大きな HF ドライバー(ツイータ)、大型空芯コイルを使ったネットワークなど、ハイエンド並みに投入された物量を目の当たりにし感動すら覚えます。さらに HF ドライバーのプロテクターは PTC(ポジスタ)や電球を使ったパッシブなものでは無く、アクティブタイプのものが使われています。回路は拾っていませんが使われている部品を見た限りでは、入力信号を整流しトライアックでシャットダウンする仕組みになっているようです。これなら瞬間的な過大入力による機械的な破損も防げるはずです。

そしてこの安価なハイエンド仕様のスピーカーの音についてですが、聞きなれた CD 音源で音出しをしてみると、他の同種のスピーカーと同様にハイ上がりで中域の張りも足りません。そこでウーファーを伝家の宝刀 “ALTEC ER12S” に交換したところ中域も張り出し心地よいバランスの音に一変しました。

ウーファーを ER12S に交換

コイルを基板から外して補強桟に固定

さらにこの状態で音楽 CD を聞き込んたところ、プラスチックの小型 CD ホーン特有のチリチリした高音が気になり出した為、HF(ツイータ)のレベルを 1-2db 落しました。尤も野外ライブで使う場合には、このアッテネーションは不要かも知れません。

以上が CP12Ⅱの素性の調査とチューニングの顛末です。満足できる音に仕上がりましたが、このスピーカーには弱点もあります。その一つはネットワーク基板上のコイルの取付強度が不足しており、輸送中の振動で抜け落ちる事があるようです。今回入手したものも抜けてぶら下がっていたため、基板から取り外してキャビネットにネジ止めしました。

また、フロントグリルでいくらか音が変化します。グリルを外したものと比較するとはっきり違いが分かりますが、その差はあまり大きくないのでそのまま使っています。ちなみにこの製品の上位機種である CP15Ⅱ では、フロントグリルによる音の変化が極めて大きいため、フロントグリルを別のものに交換して使っています。

さらに、スピコンの接触不要が起こる事があります。この症状はCP12Ⅱに限らず Classic Pro の他のスピーカーでも普通に起こりますが、 Classic Pro のスピーカケーブルを使うと起こり易いようです。

さらに最後にもうひとつ、気になる社会現象として・・・巷では「Classic Pro のロゴを取り外して使う」のが正しい使い方とされているように思えます。当方では  Classic Pro の 中古スピーカーを各種あわせて 12本入手しましたが、ロゴがついていたのはそのうちの 4本だけでした。「Classic Pro は安物」というイメージが定着してしまっており「安物を使っている事を知られたくない」からだと思いますが、サウンドハウスのファンの私としてはイマイチ釈然としない想いが残ります。おわり