PA ボランティアを始めてから 10年以上たちました。
この活動を始めたのは、時折出向くライブイベントでの音への疑問がきっかけでした。ライブ会場に設置されたスピーカーからは、音楽では無く悲鳴しか聞こえてきません。まさにオーディオマニアなら卒倒しかねないようなけたたましい音が鳴り響いており、これは何とかしなくてはならない!という想いに駆られました。
その昔、PA には ALTEC 社の大きなスピーカー が当たり前のように使われていました。そしてこの PA スピーカーはレコーディングスタジオや JAZZ 喫茶でも利用され、素晴らしい音を聞かせていました。さらに現在でもこれを室内で使用しているオーディオマニアが数多くいます。この事は、昔の PA スピーカーは家庭用のものよりも音が良く、ピユアオーディオ用としても十分通用する音質であった事を物語っています。
ところが最近のライブイベントでは、たいていプラスチックの小箱に入ったスピーカーが使われ、能力を超えたパワーで駆動されています。これでは良好な帯域バランスが得られないばかりか混変調が起こり、まともな音が出るはずはありません。
要するに現在では 音質よりも利便性が優先され、PA スピーカの音は悪くて当たり前になってしまっていいるようです。そしてこれは 70年代に ALTEC から JBL への移行が始まった頃からの大きな流れのように見えます。
そしてこの由々しき流れの中で、古き良き時代の定番「 ALTEC A5」スピーカーを持ち出し、本物の PA の音を知ってもらいたいと考えました。しかし本物の A5 は持ち運べそうには無いので、代用品を使う事にしました。そこで最初に用意したのは、JBL 4560 仕様の国産箱と FOSTEX の H-251 ホーンに ALTEC A5 のユニットを組み込んだシステムでした。
スピーカーはその使命も原理も扇風機と同じですので物量が物を云いいます。そしてセオリーどおりこの重厚長大なスピーカーは充分なパフォーマンスを発揮しました。しかしこのスピーカーの大きさは本物の ALTEC A5 と大差なく、運搬に大変苦労しました。
そしてその後、何種類かのスピーカを用意し現場に持ち込みましたが、結局は ALTEC A5 の形状をそのまま 12インチウーファー用にスケールダウンしたものに落ち着きました。これを 2013 年のびわこジャズ フェスティバルで最初に使用し、現在でもメインスピーカーとして使い続けています。
ALTEC A5 を独自に小型化(2013年に投入)
* ALTEC VOT の画像は、サウンド与太噺 より引用
ALTEC社 1945年のカタログ を併せてご覧ください。
余談になりますが ALTEC A5 の発売は太平洋戦争が終わった 1945 年です。アメリカでは日本と戦争をしながらこんなものを作っていました。そして 70年以上経た現在でもその音への高い評価は衰えを知りません。さらに驚いた事に、発売から 70 年を経過した今もなお、このスピーカーの補修部品の供給が続けられています。ALTEC 純正の補修部品だけでなく社外品もいろいろ入手できますので、部品の交換により現場のニーズに合わせた音作りも可能です。
現場では ALTEC A5 を小型化したこのメインスピーカの他に、ステージモニター用のスピーカーを複数使用します。このモニタースピーカーについては主に既製品を利用していますが、暖色系の ALTEC トーンにチューニングしています。
ステージ(フロア)モニターも ALTEC 調のサウンドにチューニング
以下は今までにお手伝いしたイベントの一例です。
- びわこ JAZZ フェスティバル in 東近江 2011
- びわこ JAZZ フェスティバル in 東近江 2012
- びわこ JAZZ フェスティバル in 東近江 2013
- びわこ JAZZ フェスティバル in 東近江 2014
- びわこジャズフェスティバル in 東近江2015
- びわこジャズ東近江 2016
- 大津ジャズフェスティバル
- 世界一美しい、大津ジャズフェスティバル
- 江州音頭フェスタ in しが 2013
参考:
なお現在、この PA ボランティア活動の運営にご協力いただける方を募集中です。
お問い合せは yukio@jono.jp まで。